元日本代表 築城智選手によるパリ五輪バレーボール解説

予選リーグ第2戦 日本vsアルゼンチン(2024年7月31日)

■【試合のスタートが良かった】■

VNL(ネイションズリーグ)での戦績も含め、下馬表的には日本有利と予想されていたと思いますが、オリンピックという大舞台でともに初戦を落としていたため、試合の入りが非常に重要だと感じていましたが、日本が第1セットを西田選手のサービスエースと関田選手の見事なトスワークで奪い取ったのは大きかったと思います

■【ミドルブロッカー3選手の起用法】■

小野寺、山内、高橋(健)の3選手がうまく起用されていました。

小野寺選手は他の二人と比べて、ミドルブロッカーながらにオールラウンダーに近い技術の持ち主なので、ブラン監督の中では第1ミドルの役割ではないかと思います。

山内選手は相手のブロッカーをよく見てスパイクを打ち分ける、特にラリー中のBクイックを相手の嫌な所に落とす技術が優れています。

高橋(健)選手は何と言っても堅いブロックと、打点の高い足の長いスパイクです。

3人誰が試合に出ても、それぞれの持ち味を発揮することができますが、現段階で関田選手とのコンビネーションの精度の部分で、今は山内選手がスタートで出ているのではないかと思います。

■【充実したバックアップ陣】■

宮浦選手はVNLから西田選手のバックアップとしての起用が定着し、常に結果を残しています。西田選手と遜色無い活躍が期待できるのは、日本の強みの一つかと思います。

大塚、甲斐の両選手は、石川選手、髙橋(藍)選手の調子の上がらないときに起用されています。大塚選手は主にレセプションでの起用、甲斐選手はどんな場面でも自分の持ち味を存分に出していて、代表の中でも屈指の強心臓の持ち主、緊張しないタイプではないかと思います。


■【築城智が見た両チームのベンチワーク】■

(あくまで予測ですが)日本代表はコンテ選手のスパイク時はP6(OH)の選手がややライン方面を優先して守る方針を取っていたように思います。

また試合を通して日本のサーブが走っていたこともありますが、極端にコミットブロックを減らしていました。相手ミドルブロッカーにある程度決められることは許容範囲だった、もしくはミドルを使わせないサーブを打つ方針だったように思います。

一方アルゼンチン代表は、第1、第2セットを失った後、第3セットからローテーションをS2からスタートさせ、関田選手が前衛時にエーススパイカーとマッチアップさせたように思います。

■【第3戦アメリカ戦への課題】■

ドイツ戦、アルゼンチン戦の2試合では、日本のレセプションがいつもより乱されていた印象です。もちろん相手の好サーブで乱されるのは想定内だとしても、フローターサーブでも攻撃に繋げるのが難しい場面が多いように感じたので、その点が不安材料です。

またVNLで決勝まで進み、オリンピックでいよいよ金メダルが狙える位置に来たことを、全員が間違いなく実感しています。その意識があるために、ほんの少しだけいつもよりプレーが硬くなっているように思います。



【解説:SALMING契約選手 築城智 ついき・さとし】

1992年1月16日長崎県生まれ。ポジションはリベロ。
2014年に初めて日本代表入り。2017年にはワールドグランドチャンピオンズカップでベストリベロ賞を獲得。 2020-21から2023-24までドイツブンデスリーガでプレーし、ベストリベロ、ベストレシーバーを受賞、2年連続でチャンピオンズリーグベスト8に進出。

準々決勝 日本vsイタリア(2024年8月5日)

■【日本の実力はイタリアに並んだのか?】■

実力がどちらが上かと問われると難しい質問ですが、今日の試合だけで言うと、間違いなく日本が試合をコントロールしていた時間が長かったと思います。

■【イタリアと互角に戦えた理由は…】■

一つの大きな要因は、イタリアのサーブミスの数です。5セット合わせて23本のサーブミスは、1セットあたり4本以上ミスをしていて、4点もしくは5点を日本がポイントを貰っていたということ。サーブミスだけでほぼ1セット分日本がポイントを貰っていたことになります。

しかしそれ以上に、イタリア戦ではこれまで日本が目指してきた日本らしいバレーボールを展開できていたと思います。 何よりもサーブレシーブ返球率とディグの本数。ディグに関しては、5セット合わせて65本成功しています。これはこのレベルの試合では異常と言っていいくらいのレシーブ力です。対してイタリアのディグ本数は47本。 それだけこちらがカウンターアタックをできる分母の数が多く、ブレイクもしくは点数を取るチャンスが多くあったということです。

■【マッチポイントを決めきれなかった要因は…】■

マッチポイントを取れなかった原因は必ずあると思います。ただどのプレーも、日本もイタリアも、ギリギリのとこで勝負していたことは間違いありません。

唯一、気になったところはジャネッリ選手のサービスエースのみで、あのサービスエースは選手達も少し悔いが残るものになってしまうのかな、と個人的には思いました。


■【この試合で評価を上げた選手】■

この試合のMVPは間違いなくリベロの山本智大選手だと思っています。

私自身同じリベロのポジションをやっていたからではなく、今日の試合をご覧になった多くの人は、山本選手のディグ力に魅了されたのではないかと思います。

日本のディグ本数の異常さは、山本選手がチームにそのリズムをもたらしていたのは間違いないと思います。

■【本当に素晴らしい試合でした】■

本当に一番悔しいのは選手達本人だと思います。ただ、私自身そうですが、本当に本当に素晴らしい試合で、勝利したイタリアにはもちろん、惜しくも敗れてしまったバレーボール男子日本代表に心揺さぶられる試合と感動、また明日からの活力をありがとうございます。と伝えたいです。



【解説:SALMING契約選手 築城智 ついき・さとし】

1992年1月16日長崎県生まれ。ポジションはリベロ。
2014年に初めて日本代表入り。2017年にはワールドグランドチャンピオンズカップでベストリベロ賞を獲得。 2020-21から2023-24までドイツブンデスリーガでプレーし、ベストリベロ、ベストレシーバーを受賞、2年連続でチャンピオンズリーグベスト8に進出。

We are the athletes' brand, constantly looking for new ways to play, new demands, and new needs. Old truths often need to be reconsidered, and we are not afraid to break a rule or two if necessary. Good can always be a little bit better. You can always train a little bit harder. But sometimes it is up to the equipment, and that are the occasions we aim at when we develop our gear. Do you play with us or do you dare the risk?

You have an eye for the game; we have an eye for details. A winning combination that has proved successful over and over again since we first entered the game with great visions 10 years ago.
Borje Salming

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